学長室だより

越後国の古絵図

新発田市郷土研究会の関川義藏さまが来学され、新発田市のお宝である古絵図の縮小版レプリカを見せてくださいました。それは正保、元禄、天保に作られた380年から190年位前の3枚の古い絵図でした。徳川時代に幕命で日本の総図を作ることになり、新発田藩をはじめ越後の諸藩が提出したものを高田藩がまとめて幕府に提出したそうです。地図には城下町や村々の名称、街道や河川、一里塚が書かれており、信濃川と阿賀野川が河口で合流していた時代もありました。江戸城の火災により幕府に提出した地図は焼失してしまいましたが、なんと新発田藩は絵図の写しを残しており、大きさ10m×5.4mに及ぶ正保絵図は、越後国全体を描いた絵図の中で最古・最大のものだそうです。これらの地図は国の重要文化財や県の文化財に指定されています。「この道につかまって20年」とおっしゃる関川さんはまさに市井の研究者で、古文書を参照して擦れて見えなくなった村の名前を書き込み、古い絵図をよみがえらせました。新発田市歴史図書館では実物大のレプリカがあり、今年の秋には企画展もあるようです。このような宝の存在があまり知られていないのは残念で、学生さんにも知ってもらいたいとお話しされました。
敬和学園大学には歴史好きの学生も多いことから、何かできないかと思います。郷土研究会や新発田市と協力して、この絵図の道をたどってみるのはどうでしょう?若者の間ではロングトレイルを歩くことが流行っており、太平洋側には1,000kmに及ぶ「みちのく潮風トレイル」もあります。トレイルセンターなども設置して少しずつ整備すれば、越後国再発見の旅ができるのではないでしょうか。英文学では徒歩旅行中の出会いをきっかけとした小説が数多くあります。新しい観光の形としてどうでしょう?(金山 愛子)

敬和学園大学の図書館には地域学コーナーがあり、郷土史に関する書籍が揃っています