チャペルのひびき

その人がその人らしくあることの守られる社会をつくるために

チャペル・アッセンブリ・アワーは、本学在学生の宮村朋佳さん(英語文化コミュニケーション学科)のご要望に応えるかたちで、包括的性教育をテーマに持たれました。性の問題は、センシティブかつデリケートな事柄ですが、チャペル・アッセンブリ・アワーが教育理念の一つと掲げる人権とも不可分であるとの判断のもと、開催の運びとなりました。チャペル・アワーにおいては、金耿昊先生(国際文化学科 准教授)が、ご自身が属しておられる在日大韓教会にて実際に経験されたできごとなどに触れながら、性(ジェンダー)の問題の奥行きと射程の広さについて、また、キリスト教世界において起こっている性をめぐるパラダイムシフト(思考の枠組みの組み換え)ともいうべき状況について、お伝えくださいました。性は、そもそも、命の根源に関わる事柄であり、人間が喜びを持って生きるための神さまの贈りものとして捉えることができるもの。しかしその一方で、キリスト教会には、性の問題に関しては、一面的な教条的理解により、知らず知らずのうちに差別や抑圧に加担してしまった歴史があります。また、社会全般においても、性の問題を、遠ざけ、あるいは、下世話な領域に追いやってしまい、その結果、不幸な事態をもたらしてしまっていることは否めません。人が人として大切にされる寛容な社会の形成のために、性の問題に真摯に向き合うことの大切さを、金先生のお話を通して改めて覚えることができました。アッセンブリ・アワーにおいては、髙橋幸子先生(埼玉医科大学 助教)を講師としてオンラインにてお話を伺いました。若い人が直面する性の具体的な問題において、自分とパートナーを守るためには、どのような知識と心構えが大事になるかを丁寧にお伝えくださいました。また先生を通して、人権とは、その人がその人らしく有り得るような人間の尊厳に関わる事柄であり、包括的性教育の取り組みは、そのようなあり方が可能とされるよりよき社会の構築のための一環であることを教えられました。このような貴重な機会を持つきっかけを作ってくださった宮村さんに心より感謝いたします。(下田尾 治郎) 

Ⅰ.チャペル・アワー 
説教 「主の契約は、虹とともに」 国際文化学科 准教授 金耿昊 先生

Ⅱ. アッセンブリ・アワー
講話 「選択肢を知り、自分でつかみ取る。包括的性教育をすべての若者に」 埼玉医科大学 助教 髙橋幸子 先生

<参加学生の感想>
感想1) チャペル・アワーでは、性交渉といった、授業ではなかなか教わることのできない内容を学んだ。成人を迎え、自分で自分の責任を負い始めるからこそ、性教育について知識を手に入れて、多様性や個性をお互いに理解し合うことが、宗教や社会形成における男と女という区別をなくしていくということを知った。人として生まれて、人として考え、性に対する罪・悪という考えは無駄であり、卑猥なイメージを持つことなく身体上の性、社会的な性(ジェンダー)を認識することが大切であることを知った。また、アッセンブリ・アワーでは、包括的性教育の現状について、義務教育としての性教育の取り組みがあるものの、卑猥な言葉を用いて教えることはできないという暗黙の了解があるという課題を知った。これから大人になるために、早いうちに正しい性教育を受けることで、加害者にも被害者にもならないための正しい情報を手に入れて、性教育をポジティブに捉えて、人権を尊重することが、「自分を大切にすること」、「互いの違いを認識する」、「選択肢を増やす」、「自分で決める」といった4つの認識につながることを知った。誤った事故により、性被害や犯罪に巻き込まれないために非常に大切な授業を聞くことができた。
感想2) 今日のお話を聞いて、確かに性教育の内容は曖昧だったように思うし、それでいて子どもの有無が問題にされるのは無責任だと感じたこともあったように思う。なんとなく性を学ぶことは恥ずかしいと思ってしまいがちだが、正しい知識を子どものころから段階的に、また大人になっても学ぶことが大切だと分かった。そして、性教育とは生殖に関することだけでなく、性に関する人権や制度、ジェンダーなどの広い範囲を学ぶことでもあると知った。多様性社会を目指すためには性問題を自分に関することと意識して学び、自分と他者の違いを認めることが必要であり、一人ひとりが考えなければならないことだと思った。